梅千代の創作物の保管庫です。
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※若干BL風味
『蜃気楼の中』
呟くのは、空中楼閣。
「僕、宇宙飛行士になりたいんだ」
「へぇ」
「無理なら東大首席で卒業して」
「はぁ」
「総理大臣になるんだ」
「ふーん」
僕らは屋上に続く階段に腰かけていた。冬の学校は教室以外べらぼうに寒い。足元から冷えが来て、座っているところからも冷えがつたってケツが冷たい。吐く息は勿論白く空中を漂う。
要するにこんな時期にわざわざ教室の外に出ようとする奴はあまりいないから、階段に座りこんでいても他人の邪魔にならない訳だ。
「…」
僕は光希に向き直った。
光希はころころと棒つきキャンディを口内で転がしている。視線は斜め上…その先には特に何もない。
「話聞いてないだろ」
訊くと光希は面倒そうに答えた。
「だって嘘だろ」
「うん」
僕はここでは素直に頷く。光希は嗤笑した。
「中崎は嘘しか言わないから、ちゃんと聞く気もねえよ」
「さて、それはどうかな」
僕はにこりと笑って言う。
「なっちゃうかもよ、宇宙飛行士」
「お前がなれたら俺は最高裁長官だな」
昔からそうだ、と光希はぼやく。彼は右手で軽く、ステッキのようにキャンディを振った。
「給食の献立から火事の出火場所まで幅広く取り扱ってるもんな、お前の嘘は」
「いやはや、照れるな」
「照れるところじゃねぇだろ。特に後者」
「嘘だよ」
「知ってらぁ」
極端な虚言癖のある僕は、今では幼なじみの光希位しか話し相手がいない。だから彼と一緒だと特に饒舌になってしまうのだ。
また話し出そうとすると、光希はあろうことか食べかけのキャンディを僕の口に突っ込んだ。
「…っぷ」
次いでぺちん、と頭を叩かれる。
一瞬、視線が交差した。
「――それ舐めて、黙ってろ」
言って、光希はやっぱりどこか遠くを見た。
光希の横顔が、僕は好きだ。長い睫毛がよくわかるし、名のある画家の絵画に描かれているように綺麗なのだ。
黙っているのは正直苦手だ。だけど僕は暫く彼を眺めることにして、嘘を撒き散らすのを自粛した。
昼休みの学校はざわざわ、喧しい。ただその音は遠く、遠くから届く。音に膜がかかっているような錯覚がある。
「……俺さ」
随分経って光希は話し出した。
彼が自分から話すのは珍しい。ん、と言って僕は彼の言葉の続きを促した。
「引っ越す事になったんだよ」
ふぅん。
「知ってるよ」
「嘘だろ」
「まぁね」
知らない、そんなこと。
光希はポケットからもうひとつキャンディを取り出して(そっちを僕にくれれば良かったのに)、 咥えた。
「……、そんだけ」
他にも沢山、言うことはあるだろうに。
「そうかい」
僕も黙った。
光希はおもむろに階段を数段登り、屋上の手前の踊り場に寝転んだ。
光希にはこういう、懶惰なところがある。埃も何にも無頓着で寝っ転がってだらだらするのだ。
暫くすると、いつの間にか彼の息吹は規則正しい寝息に変わっていた。
「…」
僕は手を伸ばして、光希の前髪に触れた。さらさらと柔らかい指通りである。
「寂しくなるね……」
嘘か本当か、自分でもわからなかった。
—————
不調…うまく書けなかった(´・ω・`)
書き直すやもしれません。
110908 修正
呟くのは、空中楼閣。
「僕、宇宙飛行士になりたいんだ」
「へぇ」
「無理なら東大首席で卒業して」
「はぁ」
「総理大臣になるんだ」
「ふーん」
僕らは屋上に続く階段に腰かけていた。冬の学校は教室以外べらぼうに寒い。足元から冷えが来て、座っているところからも冷えがつたってケツが冷たい。吐く息は勿論白く空中を漂う。
要するにこんな時期にわざわざ教室の外に出ようとする奴はあまりいないから、階段に座りこんでいても他人の邪魔にならない訳だ。
「…」
僕は光希に向き直った。
光希はころころと棒つきキャンディを口内で転がしている。視線は斜め上…その先には特に何もない。
「話聞いてないだろ」
訊くと光希は面倒そうに答えた。
「だって嘘だろ」
「うん」
僕はここでは素直に頷く。光希は嗤笑した。
「中崎は嘘しか言わないから、ちゃんと聞く気もねえよ」
「さて、それはどうかな」
僕はにこりと笑って言う。
「なっちゃうかもよ、宇宙飛行士」
「お前がなれたら俺は最高裁長官だな」
昔からそうだ、と光希はぼやく。彼は右手で軽く、ステッキのようにキャンディを振った。
「給食の献立から火事の出火場所まで幅広く取り扱ってるもんな、お前の嘘は」
「いやはや、照れるな」
「照れるところじゃねぇだろ。特に後者」
「嘘だよ」
「知ってらぁ」
極端な虚言癖のある僕は、今では幼なじみの光希位しか話し相手がいない。だから彼と一緒だと特に饒舌になってしまうのだ。
また話し出そうとすると、光希はあろうことか食べかけのキャンディを僕の口に突っ込んだ。
「…っぷ」
次いでぺちん、と頭を叩かれる。
一瞬、視線が交差した。
「――それ舐めて、黙ってろ」
言って、光希はやっぱりどこか遠くを見た。
光希の横顔が、僕は好きだ。長い睫毛がよくわかるし、名のある画家の絵画に描かれているように綺麗なのだ。
黙っているのは正直苦手だ。だけど僕は暫く彼を眺めることにして、嘘を撒き散らすのを自粛した。
昼休みの学校はざわざわ、喧しい。ただその音は遠く、遠くから届く。音に膜がかかっているような錯覚がある。
「……俺さ」
随分経って光希は話し出した。
彼が自分から話すのは珍しい。ん、と言って僕は彼の言葉の続きを促した。
「引っ越す事になったんだよ」
ふぅん。
「知ってるよ」
「嘘だろ」
「まぁね」
知らない、そんなこと。
光希はポケットからもうひとつキャンディを取り出して(そっちを僕にくれれば良かったのに)、 咥えた。
「……、そんだけ」
他にも沢山、言うことはあるだろうに。
「そうかい」
僕も黙った。
光希はおもむろに階段を数段登り、屋上の手前の踊り場に寝転んだ。
光希にはこういう、懶惰なところがある。埃も何にも無頓着で寝っ転がってだらだらするのだ。
暫くすると、いつの間にか彼の息吹は規則正しい寝息に変わっていた。
「…」
僕は手を伸ばして、光希の前髪に触れた。さらさらと柔らかい指通りである。
「寂しくなるね……」
嘘か本当か、自分でもわからなかった。
—————
不調…うまく書けなかった(´・ω・`)
書き直すやもしれません。
110908 修正
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